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キノコ文学?いやいや

 オルガ・トカルチュクというポーランドの作家の<『昼の家、夜の家』という小説を読みました。

 新刊として入荷してきた日に見つけ、「これは」という予感がしたので即購入。

 予感的中。
 「当たり」です。
 最初にぱらぱらと拾い読みしたときに、「あ、アゴタ・クリストフっぽい。一文一文キレのある感じとか」という印象を受けたのですが、読み終わっても印象変わらず。

 私の抱いているクリストフ作品像に誤りがあるかもしれませんが、それでもクリストフ好きに是非おすすめしてみたい一冊です。

 
 あらすじは、いや、でもこんな小説のあらすじなんて書く意味あんのか?と自問自答しつつやっぱり書きますが、チェコとの国境付近の町「ノヴァ・ルダ」に移り住んだ語り手が、隣人のマルタを観察したり、キノコを食べたりする話です。

 いや、違うか。

 ノヴァ・ルダや隣町ピェトノに住む/住んでいた人々の挿話が挟み込まれ、さらに中世の聖女クマーニス伝とクマーニス伝の執筆者パスハリス修道士の物語も割り込んできて、その合間合間に語り手がキノコを食べます。

 そんな話。

 あっちにいったりこっちにいったり、振り子のように紡ぎだされる挿話群。語り手「わたし」とマルタの交流が淡々と語られる一連の掌編は、その振り子の中心です。「わたし」の日常にちょっとだけ顔を出す端役の人々が、後になって挿話の主人公になったり、逆に「誰?こいつ」という人物が後々「わたし」の日常に登場したりします。

 
 そして、読んでいて不思議なのは、「わたし」には知り得ないはずのこれらの挿話を「わたし」はどうして知っているのか、ということです。

 これは、クマーニス伝を書くパスハリスにも当てはまり、パスハリスが替わりに答えてくれていたりもします(まあ結局そのパスハリスの話を語るのも語り手なのですが)。
 
 でも、さらに謎は残ります。

 語り手はなぜこんな話を語るのか、という謎です。

 
 頭の上を国境が行ったり来たりする土地で、アイデンティティを探るためでしょうか。

 ジェンダーが抱え込むトラブルのためでしょうか。

 深層心理で他者とつながる通路を開くためでしょうか。
 
 または別の理由。

 
 答えはどれでも合っていて、どれも違っているのでしょう。
 
 私にとって確実なのは、また読みたくなる、読んで確かめたくなる、そんな本ということです。

 
 本当は「キノコでトリップしてそのとき視たことのまんま書いた」だけの話かもしれません。

 実際「ポーランド人はキノコが大好きだ」と訳者のあとがきにありますし。

 1つの構造物として統制が取れているように読めるのも、こちらの思い過ごしかも。
 
 そんな疑惑すら解釈のひとつとして楽しめちゃいます。

 
 一冊で三冊分の価値はある本。
 
 貧乏性なので、こういう本が大好きです。

 
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Author:ダルニ
東大阪→高松市在住。書店員
年上の嫁と小六の息子との3人暮らし。

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